「なぜ?」高級車を手放さない社長と、家を欲しがる赤字社長。

経営支援部/freee認定 経理コンサルタント

小泉 直哉


事業再生とは?
根本的な改善策は同じ。

事業再生の多くは緊急性が高く、まずは現金の流出を止めることなど、再生のための時間を稼ぐことから始まることが多いです。そうして得られた時間を使って矢継ぎ早にPDCA【Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善】を行っていくのですが、通常の経営コンサルティングと大差はないと考えています。ただし事業再生の場合は、圧倒的に時間が少なく、小さな計算違いが会社や従業員、取引先、地域に対して大きな影響を与えてしまうことも事実です。また、そもそもこのような状態に至ってしまった真因に致命的原因があったり、時すでに遅しの状態であれば、改善自体が叶わないケースもあります。

課題・問題を解決すること = 対策を講じること = 心を覗くこと。

事業再生を行っていくなかで、不合理な出来事を目の当たりにすることがよくあります。例えば、会社の財務は倒産寸前なのに社長が高級車に乗っていたり、毎月の支払に窮する状況で不相応な交際費の計上があったり。ご家族や経理担当者、金融機関などから社長に再三指摘があっても、改善に取り組まないようなケースです。私たちはそこを真直に見つめ「なぜ」をヒアリングします。「高級車は社長にとってどんな意味があるのか?」「接待をしないと、どんな問題が生じるのか?」と。その回答には「社長は誰にも褒められないポジション。私だってご褒美が欲しい」「接待以外の営業方法が分からない」という人間的な気持ちが垣間見えることは少なくありません。私たちは、社長のそのような気持ちを汲み、その上で経営の再生を行っていくのです。このように、社長の気持ちに刺さった小骨のような悩みが、会社全体の先行きを曇らせているような場面によく出会います。私たちのコンサルティングサービスは経営の支援であり、会社を評価することではないことを、常に心にとめています。

クライアントは何が正解かわからないほど、客観性を失う可能性も。

その他の事例だと、業績は赤字、さらに法人として融資を受けられないために、個人の持ち家などの財産を売却し、会社に貸し付けている状態の会社です。それでも「家が欲しい。どうにかならないだろうか?」というのがクライアント(社長)の要望でした。対話をするなかで明らかになってきたのは、社長が“家”いう固定資産を“団らん”や“安寧”の象徴としてとらえていること。日々の苦しい経営環境のなかで、せめてもの安らぎの場所として、それを求めている事が分かりました。私たちが注目するのは、表面的な問題や社長の口から出てくる与件ではなく、根本的な部分なのです。コンサルティングの中で、社長にとっての安息の場所は、“家”ではなく“家族”であると気付いていただくことができ、家族にもそのサポートの気持ちがあることを確認することができました。そこから本格的な経営改善に着手することができました。

経営者は孤独…それを助けられる、頼られるのが私たちの仕事。

経営者とともに私たちがするべきことは、今ある課題に没頭し、ひたむきに改善に努めることです。たとえば、社員や顧客など利害関係のある人は、経営者へ様々な評価や考えを持っています。今まで経営者自身が行ってきた傲慢な経営や言動がそうさせたのかもしれません。上に立つ者としてのイメージダウンや失った信用は取り戻せません。しかし、そのような紆余曲折を経て、今できることに一生懸命に取り組むことが重要です。そして、経営者が直面している現状を一緒になって分析・改善し、先を見据えたサポートをしていくのが私達の使命です。そうして問題が解決され、会社が本来あるべき正常な姿へと変化していく。経営者自身の身も心も健康になっていく様子を隣で見ていられることは、私たちの何よりのやりがいです。